膝裏(膝後面)の痛み 考えるべき病気8選

膝の痛みで通院していても改善しない場合、原因が違うこともあります

整形外科で診断されにくい痛みの原因も含めてお話します

患者さん「近くの診療所に通って膝の注射をしていますが、なかなかよくなりません」

医師「レントゲンではまだ変形は進んでいないですね。どこが痛いですか?」

患者さん「膝の裏が痛むんです。」

医師「調べてみますね。もしかしたらこのまま注射していても、よくならないかもしれません」

歩行する際に負荷がかかりやすい膝は痛みが出やすい場所です。

一方で、よくある病気からレアな病気、見逃してはいけない病気まで原因は多岐に渡ります。

今回は、膝の痛みの原因となるような病気で、よくある病気と、見逃してはいけない病気、診断されにくい病気にわけてお伝えしていきます。

※よくある病気

1 変形性膝関節症

2 半月板損傷

3 ベーカー嚢腫

4 腰椎症性神経根症

※見逃してはいけない病気

5 (化膿性)膝関節炎

6 骨折

7 骨壊死

※診断されにくい病気

8 筋膜性疼痛症候群(大腿二頭筋)

<それぞれの病気の特徴>

1 変形性膝関節症

通常、徐々に症状が出現することが多く、初期には動き始めに痛みが出ることが多いです。膝関節の内側や外側に痛みが出ることが多いですが、損傷部位により膝裏に痛みが出ることもあります。関節に水が溜まることも多く、膝の腫れや動きにくさを自覚することもあります。通常、レントゲン検査で診断します。

2 半月板損傷

怪我で急に痛める場合と、加齢で徐々に痛んでくる場合があります。主な症状は膝を動かしたとき体重をかけるときに痛みがあり、時に曲げ伸ばしの際にひっかかるような症状が出ることがあります。痛みの部位は半月板損傷の部位によるため、決まった部位はありません。半月板の後ろ側(半月板後節)の損傷があれば膝裏に痛みが出ることがあります。通常、MRI検査で診断します。

3 ベーカー嚢腫

膝裏にできる水の袋のことで、膝裏の腫脹で見つかることが多いですが、痛みを伴うこともあります。通常、膝裏の内側にできることが多く、腫脹を伴う場合や膝裏内側の痛みの場合、こちらの病気の可能性があります。エコー検査やMRI検査で診断します。

4 腰椎症性神経根症

腰部で神経が圧迫されると、圧迫の部位により膝後面痛として現れることがあります。第5腰椎神経根の圧迫で膝外側の痛み第1仙椎神経根の圧迫で膝後面の痛みが出ます。通常、すねの外側やふくらはぎ、足の甲や裏にも痛みやしびれが出現することが多いです。MRI検査で圧迫部位と症状が一致しているか確認して診断します。

5 化膿性膝関節炎

急に膝の痛みと熱感、発赤、腫れがあるようなら関節炎の可能性があります。関節全体の痛みが出ることが多いです。痛風や偽痛風、感染症によるものがあります。関節液を検査することで診断します。

6 骨折(後十字靭帯付着部裂離骨折)

怪我によることが多いですが、軽微な怪我(たとえばつまづいたなど)で起きることもあります。膝後面に靭帯が付着しており、その付着面が引っ張られて骨折することがあります。その場合、痛みがあっても歩行できることもあります。診断には、骨折の程度により、レントゲンやCT、MRI検査を行います。

7 骨壊死、軟骨下骨折

骨壊死はステロイドを定期内服している人、軟骨下骨折は骨粗鬆症がある人に多いとされ、軟骨下骨折は高齢女性に多く見られます。レントゲン検査では特に異常がないのに、体重がかかったときなどに強い膝の痛みが見られる場合にこの病気を疑い、MRI検査で診断します。

8 筋膜性疼痛症候群(MPS)

筋膜の異常が原因で痛みやしびれを引き起こす病気のこと。筋膜とは、筋肉を包んでいる袋であり、その袋の表面には痛みを感じる組織(自由神経終末)があるとされます。筋肉と筋膜が損傷し、治ってくる過程で周囲の組織と癒着したりすると慢性的な痛みの原因となります。

痛みがある部位が必ずしも原因とは言えず、根源が別にあることもあるため、神経分布等を用いて診断します。

診断には、上記の痛みの原因となるような病気が否定的であり、

鋭敏な圧痛点があること

・圧痛の部位に一致してエコー検査で筋膜の異常を認めること

が必要とされます。

膝裏の痛みとしては

内側なら 大腿二頭筋内側頭

真ん中なら 脛骨神経

外側なら 外側頭、総腓骨神経

が原因となることがあります。

治療にはエコーを見ながら痛みの原因と思われる部位に針を刺します。その部位に到達していることを確認して医療用の水(および痛み止めを追加することもあります)を注入します。癒着して固まっている組織が剥がせれば終了です。(この一連の手技のことを’ハイドロリリース’といいます。)

診断がつきにくいことも多く、その後、症状が改善されることを確認し、診断の補助としています。

以上、何かの参考になれば幸いです。困ったときには近くの医療機関を受診してください。

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