以前に書かせて頂いた下前腸骨棘裂離骨折ですが、それに似た病気の上前腸骨棘裂離骨折についてです。その違いについて解説します。
学校の先生「お母さんですか?○○君が徒競走の練習中に急に痛いと言って動けなくなったんです。」
お母さん「そうなんですか。わかりました。すぐに学校へ向かいます。」
こんな感じで急に足の付け根を痛がるようなことがあればこの病気かもしれません。下前腸骨棘裂離骨折という、よく似た病気についても解説していますので、そちらも併せてご覧ください。
<上前腸骨棘裂離骨折>
*発症年齢、性別
思春期、男性
筋肉が急に発達する一方で、骨の成熟が落ち着かず、強い力でひっぱられた弱い骨を傷めます
*原因
骨端線とよばれる、骨の成長をつかさどる部分が、筋肉に過度にひっぱられることで骨折を起こすことによります。
筋肉は縫工筋や大腿筋膜張筋が関係しています。股関節を曲げたり、外に開いたり、膝を曲げたりする作用がある筋肉です。
どちらの筋肉が原因で骨折が起きたかによって大きく2つのタイプに分かれます。
縫工筋型 | 大腿筋膜張筋型 | |
原因 | ダッシュする際におきる | スイングする際におきる |
骨折の方向 | 前方+下方 | 外側 |
骨折の大きさ | 小さい | 大きい |
avulsion fractures. J. Pediatr. Orthop., 22:578-582, 2002.
*治療法
大半が保存療法を行い良好な成績が得られている
骨折のずれ(転位)が15mm以上の場合は、手術療法の方が慢性疼痛、偽関節のリスクが少ないという報告がある1)
固定方法 | 種類 | 特徴 |
スクリュー | 金属製 吸収性 | 手技が比較的簡易 後日抜去が必要なことがある 骨片が小さいと固定が難しい |
テンションバンドワイヤリング法 | 軟鋼線 非吸収性糸 | 小さい骨片でも固定できる 手技が煩雑 後日抜去が必要なことがある |
アンカー | スクリューと糸 | 小さな骨片でも固定できる 後日抜去が不要 長期成績が不明 |
of the anterior superior iliac spine(ASIS). Arch. Orthop. Trauma Surg., 137:173-177, 2017.
*スポーツ復帰の目安
手術療法で8週以内、保存療法で12週程度とする報告がある1)
*参考文献
1)Cai, W., Xie, Y., Su, Y.: Comparison of nonsurgical and surgical treatment using absorbable screws in anterior-superior iliac spine avulsion fractures with over 1.5 cm displacement. Orthop. Traumatol. Surg. Res., 106:1299-1304, 2020
以上、参考になれば嬉しいです。お読み頂きありがとうございました。
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