サッカーするこどもには要注意!ボールを蹴ってから足の付け根を痛がるとき〜下前腸骨棘裂離骨折〜

ボールを蹴ったとき、あるいは走った後から足の付け根が痛いのでなかなか治らないとき、こんな病気かもしれません

「お母さん、今日の昼から足が痛いよう。サッカーの時間で足を痛めたんだ。」

「どうしたの、そこがぶつかったわけでもないし、腫れてもいないし」

「普通にサッカーしただけなのに、急に痛くなって走れなくなったんだ。」

このような場合、お子さんが骨折していることもあります。

病名は、下前腸骨棘裂離骨折

子供の骨は大人と違って成長しています。骨が大きくなる部位のことを骨端線といいます。

その骨端線は成長にとって不可欠な部分ですが、大人に比べて弱く、怪我をしたときに痛めやすいという特徴もあります。

裂離骨折というのは、骨端部(骨の端っこ)にくっついている筋肉により骨の表面が剥がれることのことです。一般的に剥離骨折とも言われます。

下前腸骨棘とは骨盤にある骨のこと。ここには大腿直筋というふとももの前にある筋肉がくっついています。

大腿直筋の役割はふとももを曲げたり、膝を伸ばしたりする作用があります。

つまり急に強い力で膝を伸ばしたり、ふとももを曲げたりすると筋肉に引っ張られた骨が剥離骨折を起こします。この病気のことを下前腸骨棘裂離骨折と言います。

骨盤の裂離骨折に関する研究は下記の通りです。

発症年齢11−18歳
平均年齢14歳
男性:女性3:1
下前腸骨棘骨折の占める割合約50%
原因スプリント  39%
ボールキック 29%
Schuett DJ, Bomar JD, Pennock AT. Pelvic apophyseal avulsion fractures:
A retrospective review of 228 cases. J Pediatr Orthop 2015; 35: 617-23.

<下前腸骨棘裂離骨折>

・陸上競技の全力疾走時やサッカーでボールを蹴る瞬間に発生することが多い

・突然に足の付け根に痛みが発生する

・痛みのためすぐに医療機関を受診することが大半だが、痛みが少なく1ヶ月以上経過して受診することもある

・治療には保存療法と手術療法があり、どちらの治療法がよいか明確な基準はない

*手術適応

骨のずれ(骨片の転位)が10mm以上ある場合
20mmとする報告もある
早期のスポーツ復帰を希望する場合
偽関節(時間経過しても骨が癒合していない)となった場合
異所性骨化(別の部位に骨ができる)のある場合

岡田陽生,中 康匡,麻生伸一.スポーツによ る前腸骨棘裂離骨折について.日本整形外科ス ポーツ医学会雑誌 1991;10:255-258 
Rajasekhar C, Kumar KS, Bhamra MS. Avul- sion fractures of the anteriorinferior iliac spine;the case for surgical intervention Int Orthop 2001;24:364-365.

*保存療法

決まった保存療法の方法はないとされている

1 股関節屈曲位での臥床

2 ギブス固定を行う

3 装具固定を行う

4 スポーツ禁止のみを行う

などの方法がある。どの方法にしても自分の力で股関節を曲げたり、膝を伸ばしたりすると筋肉が収縮し骨折部がずれたり、骨が癒合しにくくなったりするため、その運動を控えるような治療法という意味では共通している。

また保存療法の方法によっては十分に安静が保てず、骨折部のずれのリスクがあること、ずれが進んだり、骨癒合が得られない場合には手術治療が必要となる。主治医の先生と治療法について十分に話し合うことが重要である。

以上、何かの参考になれば嬉しいです。ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

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