成長痛の特徴、年齢、症状、治療について〜小学生が膝を痛がったときに見分けるポイント〜

お子さんが夜に痛がるけど昼間になったら痛みが引いている。病院につれていこうか迷ったときに、成長痛とはどのようなものか知っておくのも大切です。病院で勤務する現役整形外科医師が、実際に診断するポイントについてお伝えします。ぜひ参考にしてみてください。

小学生のうちの子、夜になったら足を痛がるけど、朝になったら治っているの、大丈夫かしら

目次

成長痛の定義

幼児期から学童期の小児に、大腿部から膝周辺を中心とした部位に、一過性の疼痛を反復して訴える状態

成長痛の特徴

  • 幼児期から学童期の小児におきる
  • 除外診断、つまり他の病気が否定されてから診断される
  • 夕方から夜間痛の痛みで、日中には痛みがない
  • ふとももから膝周辺の痛みを繰り返す

成長痛を診断するにあたって、まず重要なのはこの検査を行えば、成長痛と診断する検査がありません。つまり他に疑わしい病気が否定されてはじめて診断される病気とされています

寝る前に突然、膝やふくらはぎを痛がり、1時間もしないうちに自然におさまり、眠りについて朝には痛がらない。そんな症状が月に数回おきる、というのが典型的な症状です

成長痛の診断基準

Waltersらが2013年に発表した論文で、診断基準はこう定められています

  • 疼痛は両下肢にある
  • 疼痛は 3~12 歳で始まる
  • 疼痛は夕方、夜間に生じるが朝には問題ない
  • 生活の制限や跛行はない
  • 典型的な疼痛部位は大腿前面、腓腹部、膝後面で筋肉痛を感じるが関節痛はない
  • 痛みは間欠的で痛みのない日や夜がある。下肢痛のない間隔は日、週や月単位のこともある
  • 腫脹、紅斑、圧痛、外傷、感染や可動域制限などの整形外科的な疾患を示唆する所見はない
  • 検査は正常範囲内で血沈、X 線、骨スキャンでも異常はない
  • 疼痛は少なくとも 3 カ月間は持続する
  • 不健康な状態とは関連がない

出典:Walters AS, Gabelia D, Frauscher B:Restless legs syndrome(Willis—Ekbom disease)and growing pains:are they the same thing? A side—by—side comparison of the diagnostic criteria for both and recommendations for future research. Sleep Med 14:1247—1252, 2013

成長痛の症状

  • 両側の足に痛みがある
  • 夕方、夜間に痛むが、日中には痛みがない
  • 太ももの前面、ふくらはぎ、膝の後ろが痛むことが多い
  • 痛みがない日がある
  • 3ヶ月以降続く
  • 痛みの場所が変わることが多い

夜間に痛がるので、翌日病院に連れて行こうとするも、朝になると痛みがなくなって元気にしているので、病院に行こうか悩むのもよく伺う話です

成長痛のおきる年齢や家庭環境

  • 年齢は3歳から12歳
  • 特に3−5歳に痛みが出やすい
  • 数年続いて自然に治る

海外の報告注1)では、4−6歳の3人に1人は成長痛を訴える とされています

注1) Evans AM, et al.: Prevalence of “growing pains” in young children. J Pediatr 145: 255-258, 2004

成長痛になりやすい子の特徴

  • 長男、長女に多い
  • 一人っ子に多い
  • 母親から干渉を受ける場合が多い
  • 痛みに敏感な子がなりやすい

同年代の子どもより痛みに敏感なお子さんが多く、頭痛や腹痛を訴えることもよくあり、心因性の要素が多いともされています

成長痛と間違えられやすい病気

  • 単純性股関節炎
  • ペルテス病
  • 若年性特発性関節炎
  • 家族性小児四肢疼痛発作症
  • 慢性再発性多発性骨髄炎
  • 疲労骨折
  • 不全骨折
  • 骨腫瘍

国立成育医療センターの日下部医師によれば成長痛と診断されたことのある23例のうち、2例は別の疾患と診断されたと報告されている 出典:日下部 浩:整形外科疾患―いわゆる成長痛との鑑別を中心に.小児内科 50:1098‒1101,2018

一度、成長痛と診断されても病名が変更されることもあるんですね

成長痛と診断するのは簡単ではなく、典型的な症状や経過でない場合には、再度病院を受診を

単純性股関節炎

10歳以下の子どもに起きやすい、一過性の股関節炎。特に誘因なく、股関節や膝関節を痛がり、足を引きずって歩くようになります。通常、発熱することはありません。

股関節の病気でも膝の痛みを訴えることはよくあります

ペルテス病

5歳から7歳の男児に多く、股関節の骨が壊死する病気です。股関節の痛みや足をひきずって歩くようになります。片側だけのことが多く、両側の場合にも同時発症はまれとされています。

若年性特発性関節炎

女児に多く、2−3歳に発症することが多いとされています。全身の関節(1ヶ所以上)の腫れや発熱、午前中に症状が出やすい(動きたがらない)などが特徴です。採血検査で自己免疫の異常の確認(IgG ,抗核抗体陽性,抗 CCP 抗体上昇,MMP‒3 上昇)を行います。

家族性小児四肢疼痛発作症

乳幼児が手足の痛みを繰り返す病気で、遺伝性があります。疲れや冷えをきっかけに股関節、膝関節、足関節を痛がるります。繰り返すことが多く、温めることが有効とされています。

慢性再発性多発性骨髄炎

10歳前後の子どもにおきる、骨に有痛性の炎症がおきる病気です。痛みの増悪と改善を繰り返します。発熱や皮膚症状を伴うことも多いとされている、難病です。

不全骨折

いわゆる『ひび』のこと。ずれがない骨折のことを指します。怪我がきっかけで起きますが、子どもで訴えることができないとわからないこともあります。骨折があっても歩行できることもあります。

骨腫瘍

安静時に痛みがあるか、体重が減少していないか、今までの病気がないか、レントゲンで異常がないか、などをチェックします。疑わしい場合にはMRI検査等を行います。

成長痛を診断するのに必要な検査

  • レントゲン検査が一般的
  • 必要があれば採血検査やMRI検査

成長痛を診断するには除外診断が必要不可欠です

レントゲン検査で、骨に異常がないか調べます。

成長痛ではレントゲン検査などで異常所見はみられません

感染症や自己免疫性疾患が疑われる際には採血検査を行います。

骨以外の組織、たとえば、半月板や靭帯、筋肉や脂肪などの皮下組織、骨の内部などを確認するためにMRI検査を行うこともあります

成長痛と診断された後の治療法

  • スキンシップをとる
  • ストレッチをする
  • 非典型的ではない場合には、再度、医療機関を受診

成長痛は心因性の要素が大きく関係しているとされています。親や身近な人からの愛情を受けることで子どもは安心し疼痛は改善されやすくなります。具体的には、疼痛部位をさすったり湿布を貼ったりすることでスキンシップを図り、子どもに安心感を与えることが重要です

成長痛はご両親からの愛情やスキンシップで、早く、よくなります

また、ふとももやふくらはぎなど足のストレッチをすると成長痛が早く改善すると報告されています

出典:Baxter MP, et al “Growing Pains” in Childhood A Proposal for Treatment. J Pediatr Orthop 8 402-406, 1988

Q&A

1 オスグッド病は成長痛ですか?

オスグッド病やシーバー病などの腱付着部炎や骨端症は、一般的には成長痛とは違いスポーツ障害に分類され、原因が特定されています。

2 成長痛の原因は何ですか?

原因ははっきりわかっていません。成長に伴う痛みという概念には否定的な意見が多く、心因性の要素が大きいともされています。

3 後遺症は起こりますか?

後遺症はおきません。小学生以降、痛みの頻度は少なくなっていきます。

結語

成長痛はこの検査を行えば診断できるというものはなく除外診断になります。まずは医療機関を受診することをおすすめします。

また時には別の病気が隠れていることもありますので、典型的な症状でない場合には、医療機関を再度、受診することも検討していただければと思います。

以上参考になれば嬉しいです。

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