こどもの手が抜けたとき〜肘内障の診断と治療〜

怪我なんてしていないのに、急に手を動かさなくなった

さっきまで機嫌よく遊んでいたのに急に機嫌が悪いわね。。。「どうかしたの?」

「お兄ちゃんにおもちゃをひっぱって取られた。肩が痛いよう」

「指を動かしてみなさい。」指は動くのにこっちの手をあまり使わなくなった。おかしいわね・・・

小さなお子さんのご家庭ではこのような経験、ありませんでしょうか。

実際に病院を受診した方や自然に治った人も少なくないと思います。

今日のお話の病名は肘内障です。

目次

肘内障とは

肘内障のことを別名、橈骨頭亜脱臼といいます。

橈骨とは、肘と手首の間(通称、二の腕)にある2本の骨のうち、親指側にある骨のことです。

そこの肘側の関節が亜脱臼、つまり脱臼しかかっている(亜とは「次の」とか「2番目の」という意味です)状態のことを指します。

亜脱臼と脱臼の違い

肘内障(橈骨頭亜脱臼)肘関節脱臼
原因腕を引っ張られるというエピソードが多い
寝返りを打っただけでも起きる
転倒や転落など大きな怪我
病態靭帯が橈骨頭から外れる、
関節の一部がずれる
靭帯が断裂して関節全体がずれる
症状腕を使わない
機嫌が悪くなる
肘以外の場所の痛みを訴えることもある
強い痛みを訴える
診断腫れ、皮下出血はない
レントゲンで異常がない
(撮影しないことも多い)
腫れ、皮下出血、変形がある
レントゲンで脱臼が明らか
治療手を回しながら肘を曲げる整復方法が一般的
その後の固定は不要
骨折の有無や脱臼方向、関節内の介在物による
慎重に整復した後に固定を行う
手術が必要となることもある
橈骨頭亜脱臼と肘関節脱臼の違い

*子供は骨が弱いので肘関節脱臼よりは、上腕骨顆上骨折など骨折の頻度の方が高い

肘内障のポイント

①好発年齢は1−3歳(80%) 6歳頃までは起きる可能性がある

②典型的には腕をひっぱった」が50%。そのほかは手をついた」「腕を捻ったが多い。「寝返りを打った」という報告もある。

③高所からの転落や転倒など大きな怪我、肘の腫脹、変形、発赤などは骨折を疑うためレントゲン検査を行うか検討が必要

④整復した際に、コリっというような整復できた感触があれば整復できている可能性が高い。15分程度経たなければ元のように動かせないこともある。肘内障であってもその場で整復できないこともある。

6歳頃までは再発の可能性がある。固定などは不要だが、1−2週間は特に腕を引っ張らないように注意が必要。

これに注意

実際に整復ができれば、すぐに症状が改善し肘内障と判断できる。しかし肘内障であっても整復できない肘内障も存在します。その場合、不全骨折や軟骨損傷との鑑別が難しいです。

肘内障であっても、その場で整復できないこともある

診断の一助となるのが、関節エコー検査である。関節内に液体(血液)貯留があれば関節内の損傷(骨折や軟骨損傷)を疑う所見となります。

関節エコーをすれば関節内の出血を確認でき、診断の補助となる

肘内障の場合、自然に整復されることも多く、その場で整復されないからといって、あわてることはありません。その後、家に帰って手を使っているうちに知らないうちに治っていた、という話も珍しくありません。一方で痛みが続くようなら精密検査が必要となってきます。重要なのは、症状が改善されるまで経過を確認していくことです。

その場で整復されなくても大丈夫  ただし症状が続く時には、精密検査が必要

さいごに

実際には肘内障と骨折・脱臼の鑑別が難しいことがあります。また骨折の場合に整復をしようとすると骨折がずれてしまうこともあります。無理せずお近くの整形外科に受診してください。

以上参考にあればありがたいです。みていただきありがとうございます。

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